2014年

12月

25日

『ブラック企業』だと誤解されないための戦略PR術

限られた予算でできる「話題作り」の手法について戦略PRの視点で書かせて頂こうと思っています。さて、第一回目なのですが、のっけから恐縮ですがテーマを変更させて頂き、巷で話題の「ブラック企業」について書かせて頂きます。

バッシング

「ブラック企業」へのバッシングが花盛りです。しかし、世の中に『ブラック企業』でない企業などはありません。もっとも、こんなことを言ってしまいますと、多くの方からお叱りを受けることでしょう。「うちの企業は『ブラック企業』なんかではない!」と。しかし、このサイトは経営者や事業主の方が多く読まれるサイトですので、あえて冒頭でこのような「本音」を書かせて頂きました。

では、なぜ「『ブラック企業』ではない企業などない」などと言い切ったのか。それは『ブラック企業』の定義が非常にあいまいだからです。

「ブラック企業」とは

□労働法やその他の法令に抵触、またはその可能性があるグレーゾーンな条件での労働を、意図的・恣意的に従業員に強いる
□関係諸法に抵触する可能性がある営業行為や従業員の健康面を無視した極端な長時間労働(サービス残業)・労災隠しを従業員に強いる
□パワーハラスメントという暴力的強制を常套手段としながら本来の業務とは無関係な部分で非合理的負担を与える労働を従業員に強いる
(※はてなキーワード より引用)


上記のような企業のことを一般に「ブラック企業」と呼んでいます。違法行為はもちろん「犯罪」です。しかし「グレーゾーン」という以上は「明らかに違法」ではないということです。では、いったいどこまでは「ブラック」ではなく、どこからが「ブラック」なのか、その「境界線」はあいまいです。

同じく、従業員の健康面を無視した極端な「長時間労働」(サービス残業)とあります。しかし、社員が残業やサービス残業を全くしない企業というのは現実的には僅かです。では「極端な」というのは具体的に何時間以上の残業のことなのでしょうか?

さらに「パワーハラスメント」(パワハラ)の定義とは何か?仮に「パワハラ」の定義が「地位や人間関係で弱い立場の相手に対して、繰り返し精神的又は身体的苦痛を与えることにより、結果として働く人たちの権利を侵害し、職場環境を悪化させる行為」(Wikipedia参照)だとします。そうしますと、例えば、遅刻や無断欠勤を繰り返す部下を上司が繰り返し叱咤し、それでも遅刻や欠勤が改まらず、結果として責任ある仕事は与えられず、人事評価上の最低評価を繰り返し付けることとなり、最終的には退職勧告に至ったとします。これは「パワハラ」にあたるのでしょうか?これは「ブラック企業」というより考えようによっては「ブラック社員」なのではないか?

などなど・・・「ブラック企業」の定義が、そもそもあいまいですので、多くの企業が実際には「グレーゾーン企業」にあたるのが現実です。言い換えますと、どんな企業も、ある日、突然『ブラック企業』としてバッシング対象になりえます。バッシングするメディアやネット上のユーザーも「ブラック企業」に関して確かな定義や見識をもって批判をしているとは到底思えません。

「うちの会社に限って・・・」と思っていたら、ある日突然、ネット上への書き込みから始まり、炎上・拡散し、その結果、とんでもない風評被害に巻き込まれる可能性も否定出来ません。

では、そうならないために、日頃からどういう点に気をつければ良いのか、戦略PRの立場から考えてみたいと思います。

「誤解されないため」の戦略PR

そもそも「ブラック企業」という言葉の明確な「定義」がない現状において、自分の企業が明確な理由もなく「噂」「イメージ」「誤解」などがもとで「ブラック企業」としてバッシングされる可能性があります。もちろん、私は決して「ブラック企業」が良いと言っているわけではありません。問題は「ブラック企業」の「定義」があいまいなまま、メディアやネット上では企業が実名でバッシングされる可能性があり、それは企業経営者にとっての大きなリスクであるということです。

実際に企業を創立されたオーナーの方々には分かって頂けるのではないかと思います。現在では大企業、優良企業、人気企業と呼ばれる企業であっても、創業当時は、多かれ少なかれ創立メンバーたちは「長時間労働(サービス残業)」や「上司と部下との激しい言い争い確執」「社員の大量離職」「不景気時のリストラ」などを経験してこられた方も多いはずです。まさに「寝食を共にして」「同じ釜の飯を食って」企業を立ち上げた当時はごく普通のことだったことが、ある日突然「ブラック企業」のそしりを受けかねないことに、正直、不安を感じないでしょうか?

自分の企業は「ブラック企業」なんかではないと思っている。だが、「ブラック企業」だと「誤解」されたくはない。そのためにはどういう点に注意したらよいのか?以降はあくまでPR面から課題をピックアップしました。

求人広告で注意したいこと

「ブラック企業」は一般に「離職率」が高いと言われます。従って、人員確保 のために常に大量の求人広告を掲載していることが多いです。実際に事業が急成長中で、業務拡大のための人員募集であっても、現在の社員数に対してあまりに 多くの人材を同時期に募集告知する際には十分な注意をしてください。もちろんスタートアップ時など明らかな募集理由があれば誤解される恐れはありません が、すでに開業から年月が経っている企業が明確な理由の説明がないまま、大量の採用活動のための求人広告を常に掲載していますと、「社員の退職が多い企業」「社員の入れ替わりが激しい企業」だと思われるリスクがあります。

平均年齢・勤務年数・離職率の表記で注意したいこと

IT企業やベンチャー企業には創業間もない企業が多くあります。まして企業オーナー自身がまだ若い場合は、社員の平均年齢が若く、平均勤続年数も短いのは当然のことです。しかし、「従業員の平均年齢は○歳前後」「若い世代の仲間が数多く…」など社員の「年齢の若さ」をやたらと強調しますと、社員の多くが平均年齢前後で退職して離職率が高く、若い社員を「使い捨て」にする前提で採用している「ブラック企業」ではないかという誤解を受ける可能性があります。

同様に、ホームページの自社紹介などで、「入社間もない若い社員にも重要な仕事をどんどん任せる」「頑張った分だけ報われる評価システム」といった表現をあまりに多用しますと、「未経験者同然で入社しても、仕事内容についてしっかりとした指導やアドバイスがない」「入社と同時にベテラン社員と同レベルの成果を要求される」といった誤解を招き「ブラック企業」ではないかと疑われる心配があります。また、明らかにまだ社会人経験の浅そうな20代前半で、かつ入社歴の浅い社員が、仰々しい肩書きでメディア露出していますと、いわゆる「名ばかり管理職」のように、肩書きは名目に過ぎず、実際には会社が設定した目標の達成を強要させられている(いわゆるノルマ)のではないか?達成できないと何らかのペナルティーが待っているのではないかと疑いの目で見られかねないリスクがあります。

職場環境

「アットホームな雰囲気」という表現がよく使われがちです。しかし、一方で は、実際には社長や上司の暗黙の指示で、休日にも会社の行事等に参加せざるをえないのではないか。サービス残業や接待残業が多いのではないかと誤解されることもあります。また「少数精鋭」という用語は、よく外資系やベンチャー企業、コンサルティング企業等のサイトで見かける表現ですが、実際には、こなさな ければいけない仕事量に比べ、十分な社員数の確保ができていないのではないか?大規模なリストラの結果、人員が不足して慌てて大量採用をかけているのでは ないかと「ブラック企業」だと疑われることもあります。

給与と賞与

「月額40万円以上も可能」といったような「高給」を強調した求人広告や中 途採用ページの表記を飲食店や営業担当者などの募集告知でよく目にします。実際には「インセンティブ」の割合が高いにもかかわらず、社員の平均年齢や勤務 年数の割に、モデルとなる年収額が不自然に高いのではないかと思うようなことがあります。こうした表記を目にした場合、実際には残業や休日出勤などの手当 を加えた合計額ではないか、さらに人事評価の基準が明確でなく上司や経営者の主観的・個人的な評価基準でのみ評価されているのではないかと思われるケース があります。実際の給与は大幅に会社指定のノルマを上回った場合にしか与えられないのではないかと思われると「ブラック企業」の印象が強まります。

明るすぎる職場イメージには注意

「明 るくて笑顔が耐えない活発な雰囲気」を強調しすぎますと、一見、華やかで魅力的な企業だという印象を与えますが、その一方で、「楽しい職場だというイメー ジに強制(洗脳)されるのではないか?」「体育会企業(悪い意味での精神論や根性論が中心の社風)」「経営者や上司、先輩社員に逆らえず理不尽な要求をさ れる職場」といった、負のイメージを持たれることもあるのでこの点には注意が必要です。特に、求人誌等で明らかに「絵作り」をしたかのように、若くて綺麗 な女性社員の仕事場での笑顔の写真や、社長と若手社員が笑顔で語らいあう実際の職場環境ではあまり有り得ない設定の不自然な写真を大々的に掲載しますと、 思惑とは逆に「ヤラセ」による印象操作で「ブラック企業」であることを隠そうとしているのではないかと疑われかねませんので注意が必要です。

以 上、戦略PRの基本は良い印象を持って頂けるような「空気づくり」ではありますが、あまりに露骨に「空気」を作ろうとしますと、最近は「『空気作り』を恣意的にしようとしている空気」というものを見抜かれてしまう時代です。自社の職場環境や待遇など、真実を正しく伝えることは非常に大切なことです。しか し、思い余って実際以上に「良く思われよう」と勇み足をしますと、かえって「痛くもない腹」を勘ぐられ、「ブラック企業」だから不都合な事実を隠そうとし てイメージ操作しているのではないかと思われかねません。

現 在の企業広報・戦略広報において、もっとも大切なことは、「実際以上によく思われたい」という小手先の「空気づくり」ではありません。「事実を事実として 正しく知ってもらいたい」「その『伝えるべき事実』(FACT)については、誰からも後ろ指をさされないようにしっかり築き上げ、磨いていく」ということ に尽きます。

「ブラック企業」の本質は、企業オーナーや上司にあたる方々にもちろん責任がありますが、同時に本来であれば、労働のモチベーションがあがるわけのないような劣悪でひどい労働条件の下でも、周囲の目を気にするがゆえに正当な主張さえすることができず、同調圧力によって、悪い意味で「頑張って」しまい「働き続けてしまう」という日本人独特の「ムラ社会的」な職場環境(悪い意味での「職場の空気」づくり)にも大きな要因があると思います。

本 記事はあくまで、本当は「ブラック企業」ではない企業が、あたかも「ブラック企業」であるかのように「誤解されないため」に記したものです。日本中の職場 から早く、いわゆる「ブラック企業」なる企業がなくなっていくこと(ブラック企業だと思われることがいかに「損」であるかを知って頂くこと)を望んでやみ ません。一方で、就職や転職をする際には、どういった企業が「ブラック企業」なのかを見抜く目を、持って頂ければと思います。

次回はもっと販売戦略に直結した戦略PRについて書かせて頂きたいと思います。次回コラムに是非ご期待ください。